スコープス山からのエルサレム 1978年
1978年から1979年にかけての「イラン革命」は、冷戦時代のアメリカ合衆国・ソビエト連邦双方の傀儡政権が起こす革命と違い、民衆が立ち上がり、蜂起し、成功したイスラム革命で、フランス革命と並ぶ歴史的大事件でありました。
フランスに亡命していたホメイニ氏を中心に革命は遂行されましたが、フランスに居るホメイニ氏とイラン本土との連絡等、革命を支えたのが、パレスチナのエリートたちでした。
その為、恩義があるパレスチナの人々のために、エルサレム奪回は至上命令であり、「イスラムの大義」として、是が非でも成功させ、イスラムの盟主になるには、「エルサレム奪回」が唯一の手段であり、実現しなければならない命題でもありました。
それ故、イランが革命以後、「海外で争い事を起こす」時には、必ず「エルサレム奪回」という言葉が、「大義」として唱えられました。対イラク戦争(1980~1988)の時も、直接原因が他にあったとしても、「エルサレム奪回」を唱え、戦争を続行しました。
今も、「エルサレム奪回」はイランにとって最も大切な大義であり続けています。この大義の成就の為に、イランは現在、2つの事を遂行しようとしています。ひとつは「核兵器の自国保持」、もう一つは、「三日月地帯の勢力地域を完成させる」ことです。
三日月地帯とは、「イラン、イラク、シリア、レバノン(イスラエルにテロ行為を仕掛けるヒズボラ)」までの地帯で、この地域が完全にイランの支配下になれば、イスラエルは「自分の心臓にナイフを突きつけられているのと同じ状態」になります。
イランの宗教指導者が「ユダヤ人の生存権を認めず、地中海に追い出す」と宣言して以来、現在に至るまで、水面下でイスラエル対イランの争いは、日々激しさを増しています。シーア派イランの進出を望まない、サウジアラビアの国を筆頭とした、スンニー派のイスラム諸国を巻き込み、イランの「三日月地帯の支配完成」を阻止するための、イランに対するイスラエル・スンニー派諸国同盟の闘いはさらに激しさを増すでしょう。
イランのもう一つの野望はね「核兵器の保持」です。現在、「イスラエルはすでに核兵器を保持している」と言われています。そのイスラエルに戦いを挑むには、「対等に核兵器を保持することが必要」と考えています。
イランが核兵器保持のために、動向を注視しているのが、「北朝鮮の核兵器保持を、世界、特にアメリカはどのように対処するか」です。
北朝鮮は、イランをはじめシーア派の諸国と「蜜月の関係」にあります。
もし、世界が北朝鮮の核兵器保持を許すなら、イランは間違いなく「北朝鮮に右へ倣え」をして「核兵器保持」に走るでしょう。
イランが核兵器を持てば、100パーセント間違いなく、サウジアラビアも核兵器を保持し、「核ミサイルの発射台をイラン、イスラエルに向ける」でしょう。
中東は、さらに、「力のバランス」を失い、「世界大戦の火薬庫」と化します。
中東問題は宗教問題も含んでいますので、ネオコンと呼ばれる世界の「新保守主義」の人々をも巻き込んで、中東は、「戦争の火薬庫」となってしまいます。
ネオコンと呼ばれる、「新保守主義」の人々は、アメリカだけではなく、ヨーロッパにも存在します。しかし、アメリカとヨーロッパのネオコンでは、「ユダヤ人に対する接し方」が、違います。
ヨーロッパのネオコンは、「ユダヤ人の人々をキリスト殺しとして、迫害して来ました。」
ところが、アメリカの新保守主義の人々は「ユダヤ教はキリスト教の母体である」として、「ユダヤ人に選民としての尊敬の念」を持っています。ですから、アメリカの新保守主義の人々は、「エルサレムの帰属」に関して、イスラエル支持に回るのです。
イランが核兵器を保持してしまえば、「中東のバランス」がさっらに破壊されます。さらに、自国の利害のために、ロシア・中国覇権主義の参戦もあり、「中東は第三次世界大戦の火薬庫」となってしまうでしょう。
日本人である私たちにできることは、「北朝鮮の核兵器保持」を許さないことです。また、あらゆる手段を使って、シリア難民を救う努力をして、「崩れた中東のバランスを回復させる」ことです。
イランの野望は「さらに、中東のバランスを壊し、多くの人の命を奪い、血を流させることに繋がるということ」を理解する
ことです。