高野川 と 加茂川 から 鴨 川 へ 京 都
私が現役教師時代に、生徒から、「先生は、えこひいきしますか。」と、よく質問されたものです。
いつも、私は、次のように答えていました。
「私も人間ですから、好き・嫌いはあります。好きな生徒が、私に何か頼んだ時には、120パーセント頼まれた事をしてあげたくなるのが人情です。逆に、嫌いな生徒から頼まれれば、好きな人にした同じ事を、嫌いな人にするには、何倍ものエネルギーが必要になります。
私は、教師になって以来、今まで、好きな生徒にしてあげた事を、嫌いな生徒にも、エネルギーを何倍もかけてするように、心がけて来たつもりです。また、生徒の成長に必要と思った事は、たとえ、好きな生徒に嫌われても、躊躇わず、与えてきました。」
さて、若い教師の中には、クラス人数が40人のクラスを担任として、受け持ちになれば、「40人均等に、自分の力を分け与えることが、平等だ」と考える教師が居ますが、これは、大きな誤りです。
今、受け持ちの生徒の中に、障がいがあり、車椅子を利用して学校生活をしている生徒、太郎君(仮名)が居たとします。
そのクラスで、研修旅行に行くことになりました。
もし、教師が、太郎君に無関心で、40人全員に同じエネルギーしかかけないのであれば、太郎君は研修旅行を途中でリタイアするばかりか、命も危うくなります。
もし、担任がね40人一人ずつに愛情・関心を持ち、観察しているならば、太郎君が他の生徒と同じように、研修旅行を経験できるためには、担任は、想像力を働かせて、健常者である太朗君の友達の助けも手配し、自分のエネルギーのほとんどを、太朗君に集中させねばなりません。
それで初めて、太郎君は、他のクラスメイトと同じ研修ができるのです。
私の持てる力を100とすれば、100の力を40人のクラス生徒全員に、均等に使うことが、「平等」と、私は考えていません。
私の「平等」とは、太朗君のような生徒がクラスに居ても、みんなと同じように何でも出来て、また、卒業できることが、真の「平等」だと考えています。
そのため、クラス生徒の中には、1年間、「私に何もしてもらったことがない」と考える生徒も出てきます。
そのような生徒たちは、優秀な生徒なのです。優秀だから、自分自身で成長できるのです。
私の助けなど、必要なかったのです。
従って、私にとっては、残念なことですが、優秀な生徒は私のもとには、帰ってきません。
それは、丁度、「雛鳥が親鳥のもとを離れ、巣立ちする」のと似ているような気がします。
ひな鳥は、巣立ちをすれば、親鳥のもとを訪れることはありません。
親鳥もまた、次のひな鳥を育てることに懸命で、巣立った優秀な子たちのことに思い馳せることはありません。
私の、教師としての愛情は、親鳥の雛鳥に対する愛情と似ているのかもしれません。
私は、40年以上の教師生活の中で、指導者としての、良い校長も、悪い校長も、観てきました。
悪い校長の典型は、「責任が自分に来ないように、立ち回るため、生徒のためには、何もしない校長」のことです。
良い校長は、生徒の安全を第一に考え、母校愛を持って、生徒の成長を優先する校長です。良い校長は、教職員の意見、特に、自分の意見とは、反対の者の意見に耳を貸し、十分に賛成・反対の意見を戦わせた後、少数意見であったとしても、自分で責任をとる覚悟を持って、リーダーとして、自分が正しいと信じた道に進む校長のことです。
悪い校長は、多数意見を隠れ蓑にして、責任逃れをして、責任を多数の教師たちに押しつけます。
政府のリーダーも校長と同じです。
悪いリーダーは、多数意見に従って、責任は、自分に来ないようにします。
これでは、国は滅びてしまいます。
良いリーダーの第一条件は、自分の国さえよければ良いという愛国心ではなく、郷土愛・祖国愛を持って、命の尊重を中心に政策を進める人のことです。
良いリーダーは、校長が全教職員の意見を戦わせ決断したように、意見が出尽くしたところで、多数意見に従うのではなく、自分の信じる道を、責任を取る覚悟で進む人です。
また、議員たちには、批判・反対だけさせるのではなく、建設的意見を述べさせる人のことです。
国難に責任を持って、乗り越えようとする人のことです。
リーダーが、道を選択する時には、大切なことがあります。
それは、「道を選択する時の動機」です。
良いリーダーは、必ず、「国民の幸せ、安全」に動機を置き、政策を決定して行きます。
悪いリーダーは、まず、「忖度」から政策を選ぼうとします。大企業や圧力団体の利益を優先して、国益を考えようとします。先に、「答え有り」で決定しようとします。
しかも、その忖度からの政策に多数決の暴挙でもって、事をすすめようとします。好ましくない結果には、責任逃れしかしません。
もし、リーダーが自分の信念を持って、未曾有の国難にあたるならば、政策があまり有効でなかったとしても、その政策が国民の安全と命の尊重という動機から出ていさえすれば、国民は、政策批判しかしない野党の言うことより、政府を支持します。
その政策は失敗に見えても、動機が国民の安全と命の尊重から出ていさえするならば、失敗は経験に繋がり、その失敗は、貴重な将来の道しるべとなるのです。
生徒は賢いです。教師や校長をよく観ています。同様に、国民も賢いということが、どうして、議員や役人には、分からないのでしょうか。
政府の出した政策が忖度を動機とした多数意見頼りの政策か否かは、国民はすぐに判断します。
国難にあって、リーダーとして先頭に立つ皆様、失敗を恐れずに、信念を貫き、国民を守ってくださることを信じます。