ア ン ネ の バ ラ
「経験というものは、欲しいと思ったものが得られなかった時に、はじめて得られるものです。」
この言葉は、47歳という若さで亡くなったランディ・バウシュ教授の「最後の授業」での言葉です。この意味は、「経験」即ち「技術の様なもの」は、失敗はするべきで、「失敗が無ければ、技術や経験は身に付く事は無い」ということを意味しています。
私は、40年間英語の教師でしたが、英語の勉強にもこの事が当てはまります。
英語の勉強をする際に、生徒たちには、大きな誤解が生まれます。それは、「学校の授業を受け、先生の話を聞いて、ノートを取り、試験前に復習さえすれば、英語の実力が付く」という誤解です。
数学や理科の勉強は、労力をできるだけ省き、近道をした方が良い学問です。しかし、英語は違います。なぜなら、英語はスポーツや楽器演奏の技術と一緒で、忍耐と努力を持って日々会得して行く「技術」だからです。
貴方がプロのピアニストになりたいとしましょう。週に何回か 日本一素晴らしいピアノの先生に就いて学んだとしても、どんなに分かり易い説明を聞いたとしても、 もし、貴方が、努力と忍耐を持って、自分から進んで日々、毎日練習しなければ、プロどころか、貴方の特技にもなりません。
英語の勉強も同じです。英語力、即ち、「話す・聞く・読む・書く」は、全て技術ですから、日々練習をしなければ、決して身に付きません。
練習とは失敗の積み重ねです。ランディ・バウシュ教授が言うように、失敗をするから、技術は身に付くのです。
プロのテニス選手になった人も、最初は面白くない「素振り」を繰り返し、ボールを打ち出した時は、「空振り」・「ホームラン」・「ネットに引っ掛ける」というような失敗を重ねて行くから上達するのです。
では、英語の学習における失敗とは何を意味するのでしょうか?
それは、「予習を毎日する」ことです。復習も疎かにしてはいけませんが、復習には失敗がありません。
どれだけ復習をしても、繰り返しがなければ、「技術の修得」には繋がりません。
確かに、復習さえしていれば、記憶力の良い人ならば、中間・期末テストでは高得点が取れるかもしれません。
しかし、これは、自分の暗記力の良さを人に見せつけ、優越感に浸ることにしかなりません。英語の実力は、復習だけでは絶対に身に付かないのです。
「勉強は家でするもの」です。学校は、教師に自分の勉強の仕方が間違っていないか指摘してもらう、つまりフィードバックしてもらう所なのです。
さて、スポーツや楽器演奏の失敗は、どのようなものかは、分かり易いですが、それでは、英語の失敗とは具体的にどのようなものを意味するのでしょうか。
英語に於ける失敗とは、読む力では、正しい訳を知る前に、辞書を片手に持ちながら、「自分なりの訳」をすることです。書く力に於いては、「文法のドリルの数を毎日熟す事」、あるいは、「毎日、英文を書いて、教師に添削してもらう事」を意味します。
どの場合も、辞書を参考にすることは構いませんが、失敗をすることが目的ですから、正解を先に見ることや、自分が解答する前に、他人から簡単に正解を教えてもらうことは厳禁です。
なぜなら、そこには、失敗が無いからです。
従って、予習時に、教科書ガイドを見ながら勉強することは最悪です。そこには、失敗が無いからです。
英語の読む力を身につけるには、辞書と参考書を頼りに、まず自分なりにトライし、失敗することが大切なのです。
もう一つだけ、注意をすることがあります。
それは、英語を学ぶ生徒さんたちには、「ノートに日本語の全訳を書かない」、英語を教える教師は「ノートに全訳を書かせない」ということです。
英語を学ぶということは、英語での考え方を身につけることが一番大切です。
ところが、全訳をノートに残すと、内容・概念 ⇒ 日本語文 ⇒ 理解の順番になり、これでは、日本語の勉強であって、英語の考え方は、絶対に身に付きません。
必ず、英語の内容・概念 ⇒ 理解 ⇒ 綺麗な日本語文の順でなければなりません。
この順で学ぶためには、内容・概念を把握するために、上から内容把握して行く、「直訳」即ち、日本語の助けが必要になります。
つまり、ネイティブスピーカーが英文を理解していくように、句(phrase)・節(clause)ごとに分けて、「上から、上から訳す」という技術が必要なのです。
その為に、英文法を学ぶことは必須です。
読む力が無いならば、どれだけ「話す・聞く」能力があっても、国際社会の組織や企業で働くことはできません。
読む力を身につけることを生徒も教師も疎かにしてはいけません。
もう一度、繰り返します。「勉強は、基本的には面白いものではありません。英語のプロになるつもりならば、忍耐を持って、毎日鍛錬しなければ、決して英語を修得することはあり得ません。」
ちょうど、野球をする高校生が「甲子園」目指して、苦しい練習に耐えるような努力が絶対必要なのです。
ぜひ、実践してみてください。