京 都 御 所
あるアンケートで、「幸せになるということは、お金を手に入れ、物質的に恵まれることである。」という問いに「はい」と答えた人が70パーセントを超える国が3つ存在したそうです。「中国・ロシア、そして我が日本国」です。
果たして、物質的に恵まれることが、一番の幸せでしょうか。
教師生活を40年続けていて、生徒を教えている時に、私が一番気になった事は、「目の輝きを失っている生徒の数が多いこと」です。この疑問に対しての私の解答は、「物質的に恵まれ過ぎて、何も自分で求める必要がないからだ」と結論づけました。即ち「日本という恵まれた温室の環境に居て、夢すら持てない、持つ必要のない日本」に原因があると考えたのです。「努力をしなくても、物質であれば、殆どの物が手に入ってしまう日本の環境が、生徒を受け身で、夢を持とうする気力すら起こさせないのではないか」という結論に達しました。
例えば、開発途上国の子供たちは、物質に恵まれていませんが、反って夢を持てます。「多くの自国民が飢えで苦しんでいる。だから自分がこの国を富める国にするのだ。」という夢を持てます。「多くの幼い子供たちの命が、感染病で亡くなっています。自分が医者になって、幼い命を救うのだ。」
こんな夢を動機にして、貧しい国々の子供たちは、学校で、目を輝かせて、勉学に励んでいます。
ところが、日本の子供たちはどうでしょうか。世界には、学校に行きたくても行けない子供が数多く存在するのに、日本の子供たちの中には、学校に行けるのに行かずに、自分の部屋で「テレビ・ゲーム機・携帯・コンピューター等」で一日楽しく過ごす者もいます。
そんな毎日の娯楽の楽しみは、長くは続きません。
すぐに飽きて、「孤独」という心の病に、日本の多くの子供たちが蝕まれているのです。
日本の子供たちは、物質的に恵まれれば、恵まれるほど、心の平和から遠ざかって行くのです。
反対に、貧しさという苦しみの中にあっても、お互い助け合い、励まし合う子供たちは、逆境にも拘らず、「同胞の悲惨さを糺すべく、夢を実現させよう」と学校で目を輝かせながら、勉学に勤しんでいます。
少なくとも、夢を持ちにくい日本の子供たちよりかは「生きる喜び」を持っているように見えます。
子供に夢を持たせることのできない民族は滅びの道を辿ります。
では、「どのようにするべきなのでしょうか。」
私にも分かりません。私に言えることは、「現在の日本の子供たちは、決して平和で、健全な社会に暮らしているとは思えない。」ということです。
ただ、教師にはできることがあります。「世界の偉大な魂」を子供たちに紹介することで「子供たちに夢を持たせること」ができます。
本日紹介する人物は、アイルトン・セナという人物です。
彼はブラジルの大富豪の家庭に生まれましたが、父親の跡を継ぐことを拒否し、自分の力で、一流のレーシングドライバーになった人物です。
「偉大な魂」になる多くの人物は、貧しい環境に育ったり、苦労した人達です。
なぜなら、人間を美しく育ててくれるのは、悲しみ・苦しみ・試練だからです。
日本人のように、物質的に恵まれた家庭に生まれた人が「偉大な魂」になるのは、「ラクダが針の穴を通る」のと同じくらい難しいことなのかもしれません。
その意味では、日本の子供たちと同じような境遇に居ても、「偉大な魂」になったアイルトン・セナは、希少価値があり、日本人の私達が参考にできることがたくさんあると思うのです。
セナは、 世界的なレーシングドライバーとして、「音速の貴公子」と評されるほど、若くして名声も富も得た人物です。
普通人間は、人生で成功してしまうと、自分の人生に満足し、そこで、努力しなくなり、裕福な自分に甘んじて贅沢な生活に入り、堕落していきます。
しかも、セナは裕福であっただけでなく、若くて、美貌にも恵まれていて、彼が望むものがあれば、世間で手に入らないものは何もない状況でした。
にもかかわらず、セナは物質的に恵まれた人生を選ばず、最後まで、「レーシングドライバーとしての世界の頂点」を目指して、勤勉さと努力を惜しまず続けました。
「私の仕事には、現状維持というものはありません。私の人生は、急な坂道に居る人間と同じで、真っ逆さまに下に落ちるか、上り続けるしかないのです。与えられた一瞬、一瞬に努力するしかないのです。」
このセナのレーシングドライバーとしての覚悟が彼の人生の偉大さと素晴らしさを物語っています。
セナは残念ながら、レース事故で命を失いましたが、「家族の裕福な家族の財産を頼らず、自分自身の力だけで、人生で成功した姿」をブラジルの国民は今でも忘れていません。
特に、サッカーのペレ氏と同様、「自分も彼のように努力を惜しまず、人生で成功するのだ。」と、セナは自分が亡き後も、ブラジルの子供たちに夢を与え続け、永遠のヒーローとなっています。
その意味で、サッカーのペレ氏と同様に、アイルトン・セナは職業プロフェッショナル中の「プロ」と言っても過言ではありません。
なぜなら、プロとは、素晴らしい技術を見せるのがプロではなく、子供たちに「あのプロの人のようになりたい」と夢を持たせて、努力することの大切さを教えるのが「真のプロ」だからです。
さて、セナが活躍した時代、日本人、特に日本企業には、セナと同様に、「勤勉さと努力すること」の大切さを理解し、多くの日本企業戦士たちは、「努力を惜しまない勤勉さ」を保持していました。
しかし、現代の日本・日本企業は、「勤勉さ」を失い、努力することの美徳も忘れ、楽をして、お金を儲けることに奔走したり、誤魔化して儲けようとしたりするものも居ます。
日本人は、努力することの大切さを忘れてしまったようです。
日本は現在、「クール・ジャパン」と言われ、世界からチヤホヤされています。
しかし、セナの時代に、「世界から恐れられた日本人の、努力を惜しまない姿勢と勤勉さ」を、日本人はより大切にすべきだというのが私の持論です。
最後に 若い皆さんへ、
どうか、夢を持ってください。あなた方の能力は、100パーセント無限です。
確かに、「飽食の時代の日本では、物質的に恵まれ過ぎて、夢が持ちにくいかもしれません。しかし、今は日本を取り巻く情況は少し違って来ています。
原発事故による半永久的な放射能汚染で、多くの日本人が故郷に帰れずにいます。
コロナウィルスなどの感染病、また、頻繁に起こる「自然災害による、津波・洪水・大雨・土砂災害」などによって、多くの同胞が苦しんでいます。
日本はあなたの出番を待っています。
日本には、「放射能除去装置」を発明する人物が必要です。
また、あらゆる感染病にそれぞれワクチンを開発する人物が必要です。
どんな津波が来ても安全で強い地域計画を立案する人物が必要です。
どれだけ豪雨になっても、洪水・土砂災害が起こらないような地域造りのリーダーが必要です。
貴方さえ、その気になれば、「私利私欲だけでない、社会に役立つ夢」を持つことができます。
また、日本人の努力を惜しまない勤勉さを貴方が取り戻すなら、夢は実現します。
なぜなら、「あなた方の能力は100パーセント無限」だからです。
これが本日私が伝えたいメッセージです。
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